ピート原野に吹く潮風
ボウモア蒸溜所では、いまだに蒸溜所内でフロアモルティングをおこない麦芽をつくり、発芽を止める乾燥工程にピートを焚いています。潮の香もたっぷり含んで堆積したピートを焚くことによって、麦芽に独自の燻香が浸み込むことになります。
ボウモア蒸溜所の大いなる遺産
ボウモア蒸溜所には古くから守り伝承されつづけている、スコッチのモルト蒸溜所のなかでも大きな特長となっている誇り高い3つの遺産があります。
●1779年創業でアイラ島最古の蒸溜所であり、スコッチでも一、二とされる古い歴史
●いまだにフロアモルティングをおこない、麦芽乾燥にピートを焚く
●海抜0メートルにある、スコッチ最古の貯蔵庫No.1 Vaults
海抜0メートル、
第一貯蔵庫の特殊な貯蔵環境
「ボウモア」はゲール語で“大きな岩礁”。第一貯蔵庫である「No.1 Vaults」はダイレクトに海に面しており、波打ち際の岩盤を削り取り整地した上に建造されています。庫内の床は海面下に位置し、半地下のようなつくりともいえます。天候次第では波しぶきが外壁を洗い、嵐となれば荒波が容赦なく外壁を打ちつけます。
No.1 Vaultsはそんな極めて稀な立地にあり、原酒樽熟成に理想的な環境をおよそ240年にわたり保ちつづけています。最古の伝統とともに他と比べようもない立地が、“アイラモルトの女王”“ベストバランス・アイラ”と讃えられるモルトウイスキーを育んでいるのです。
ピート層をくぐり抜けた仕込水、伝統を守りつづける製麦工程
仕込水はピート層をくぐり抜けて湧く、蒸溜所近くを流れるラガン川を源とする水を使用しています。ピートの影響を受けた茶色をした良質の軟水で、アイラ島ならではの仕込水です。
水に浸した大麦を発芽室の床に広げ、時折木製シャベルですき返し、発芽を促します。この手間のかかる非効率な仕事ともいえるこのフロアモルティングにより、ボウモア独自の麦芽がつくられます。
ほどよく発芽した麦芽は、キルン(麦芽乾燥塔)の下にある乾燥室に運び込まれます。下の釜ではピートが焚かれ、ピートの熱煙で麦芽の成長を止めます。このときに固有の燻香、スモーキーフレーバー(ピート香)が麦芽に浸み込みます。
発酵槽は木桶、蒸溜器はストレートヘッド
製麦が終わると、でんぷん質を糖分に変える糖化工程へと移ります。麦芽を粉砕後、温められた仕込水とともにステンレス製のマッシュタン(糖化槽)に投入し、やさしくかき混ぜ、時間をかけてゆっくり濾過し、甘い麦汁を採取します。
次に発酵。発酵槽はオレゴンパイン材の木桶発酵槽。麦汁に酵母が加えられ、温度管理に細心の注意を払いながら時間を掛け、ウォッシュと呼ばれる発酵液(醪/もろみ)を得ます。
つづいて蒸溜。銅製の蒸溜器(ポットスチル)はすべてチャーミングなストレートヘッド。初溜、再溜による2回の蒸溜により最良の香味成分を抱いたニューメイクをカットし、これが貯蔵熟成へと向かいます。
高品質の樽、海沿いの湿潤な貯蔵環境
ニューメイクはオークの樽に詰められ、熟成への長い歳月を積み重ねていきます。主体となる樽は2種。ホワイトオークのバーボン樽とスパニッシュオークのシェリー樽。バーボン樽70%、シェリー樽30%の比率で使用されています。その他にもボルドーとマデイラのワイン樽、ジャパニーズオークであるミズナラ樽などでも貯蔵熟成をおこなっています。